「仙台雑煮」を巡る旅
仙台市太白区にある市内最大の仮設住宅「あすと長町仮設住宅」で、2012年1月から毎月1回「おしるこカフェ」を開催してきました。
手作りの暖かいおしるこを食べ、お餅を食べ、楽しくおしゃべりをする、おしゃべりサロンのようなものです。
「おしるこカフェ」は、船橋市本町通り商店街振興組合や歌舞伎町の稲荷鬼王神社の支援をいただいています。
稲荷鬼王神社では、毎年お正月に、たくさんのご家庭から寄せられた「お雑煮」の写真展を開催していることもあり、「おしるこカフェ」で「仙台雑煮」を作って、その写真を境内に展示していただこうと思い、2012年10月から「仙台雑煮ワークショップ」をスタートしました。
仮設住宅の住民の皆さんから「仙台雑煮」に関して聞き取りをしながら、お正月までかけて「仙台雑煮」を作り上げようというプログラムです。
まず最初の回は、わたくしことシモヤマが、自分の家の「お雑煮」を作り、仮設の皆さまに食べていただきました。
我が家の「お雑煮」は、わりとオーソドックスな「関東風雑煮」で、鰹節とお醤油のすまし汁に、具は鶏肉・小松菜・カマボコ、お餅は角餅を焼いたものです。
二回目は、仙台朝市の「今庄青果」さんが普及に尽力されている「仙台白菜」を使って、「仙台白菜のお煮」を作ってみました。
出来上がった「お雑煮」に舌鼓を打ちながら、皆さんの「お雑煮」についてお話を伺いました。
あすと長町仮設住宅は、宮城・福島から来た方々が集まっていますが、皆さんのお話にほぼ共通してでてくる「お雑煮」は、
・焼きはぜの出汁
・醤油味
・「おひきな」という大根と人参を細く刻んでゆがき、屋外で一晩凍みさせたもの
・凍み豆腐
・里芋の芋がらの干したもの。「カラトリ」と呼ばれています。
・ゴボウ
・糸こんにゃく
・ナルト
・イクラ
・セリ
などが入り、
お餅は、角餅を焼いたもの、というのが「仙台雑煮」のようです。
ちなみに、「仙台雑煮」は、「焼きはぜ」で出汁を取るのが特徴とのことですが、出汁を取ったあとのはぜの扱いについては、ネットで諸説あり、
・お雑煮を盛り付けたお椀にはぜを乗せる
というのが一般的なようですが、
・いわゆる「だしがら」のはぜをお客様にお出しするのはおかしい
と考える人もいらっしゃるようです。
???
まずは、作ってみてから、仮設住宅の皆さまに聞いてみましょう!
仮設住宅には、長年お雑煮を作ってきた女性が多いのだし。
ということで、12月の「おしるこカフェ」で、慣れない手つきで作った試作バージョンの「仙台雑煮」を、皆さまに食べていただき、
コメントをいただきました。
・「おひきな」は、できるだけ、細く長く切る。これは、「おせち料理」の「紅白なます」と同じで、細く長いほど縁起が良い。
・「カラトリ」が入っていると、とても喜ばれる。
・具は、お椀に山盛りにする。
などです。
今回、「おしるこカフェ」に参加してくださった、南三陸町の仮設住宅で、歌と民話によってコミュニティ支援をしている、静音ちかさんから、謎だった「はぜ」について、とてもためになるお話をいただけました。
シモヤマ:「仙台雑煮」に入っている「焼きはぜ」は、家族の中で誰が食べるのですか?
静音さん:お正月の「お雑煮」は、神様にお供えするものです。「焼きはぜ」は、いわゆる「尾頭付き」の魚として、「お雑煮」の上に乗せてお供えします。お供えしたあと下げたものを、一家の家長がいただきます。
そう、「お雑煮」、単なる料理ではなく、それぞれの家庭で古くから、「お雑煮」が、どのように食べられてきたか、という食文化/生活文化であり、宗教行事でもあるのです。
仙台朝市で、「焼きはぜ」を売っていた魚屋さんのおかみさんは、「焼きはぜは、尻尾が欠けたりしたら価値が無くなる。ご縁起ものですから」と言っていましたが、これで合点がいくというものです。
2013年1月の「おしるこカフェ」では、改善バージョンの「仙台雑煮」を作り、皆さんといただきました。
そうしたら、またまた興味深いコメントが出てきました。
・自分は仙台に長く住んでいるけれど、「焼きはぜ」のお出汁の雑煮は初めて食べた。
・自分の家の雑煮は、近くの海で採れる「アナゴ」を焼き干しにしたもので出汁を取る(石巻)
・自分の家のあたりでは、アワビがたくさん採れるので、雑煮には、一人一個アワビが入っていた(志津川)
などなど。
地域の数だけ、さまざまな「お雑煮」があり、家庭の数だけさまざまな味があるようです。
「仙台雑煮」は、決して一つではありませんでした。
これからも、いろいろな「仙台雑煮」を探す旅は続くのでした。
下山浩一/NPO法人コミュニティアート・ふなばし
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